松ヤニ



コントラバスは弓の毛に松ヤニを塗って、弦を擦って音を出す擦弦楽器と言う仲間ですが、ここではその"松ヤニ"について説明します。

松ヤニはその名の通り、松から採れる樹脂に油などをそれぞれのメーカーの秘蔵のレシピで配合したものです。
なので種類ごとに音や特性が違います。自分の弾きやすいと思えるものを使うようにしましょう。

とは言え種類もありすぎてわけわからーん!となると思いますので、幾つかのポイントとオススメの物を紹介したいと思います。


まず第一にとても大事なことは

コントラバス用の松ヤニを使う
という事です。


「何を言ってるんだ?」と思う方もいるかも知れませんが、けっこういるんですよ…間違ってヴァイオリンの松ヤニを使っている子…。
講習会などでたくさん集まると10人に1人2人くらいはいる感じですね。


世の中にはヴァイオリン用、ヴァイオリンとヴィオラ兼用、チェロ用、ヴァイオリンからチェロ兼用などなど様々な種類の松ヤニがあります。

そしてコントラバス用の松ヤニはコントラバスのぶっとい弦をしっかり捕まえてどしんと音を出す為に、他の楽器の為の松ヤニとはかなり違います。
具体的に言えば柔らかさとネバネバ具合が違います。

ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの松ヤニと比べて、コントラバス用のものはとにかく強烈にベトベトしているので、カケラとかを落としてガッツリくっついてしまったらちょっとやそっとじゃとれません。気をつけて下さい。


ふざけて友達の机に全面まんべんなく塗ったりとかは絶対やってはいけません。ちょっとやそっとじゃとれませんし、しこたま怒られることになります。ええ、僕は怒られました。


話が微妙に逸れた気がするので戻しましょう。
吹奏楽の中でしっかりした音を出したければまずはコントラバス用の松ヤニを使ってみて下さい。

しかしながら世の中にはヴァイオリン用の松ヤニを塗っている方もいらっしゃいますので(プロの人がその音が欲しくて塗る)、絶対駄目だと言うわけではないです。
僕自身もソロを弾く際に混ぜて使うこともあります。
駄目ではないですが、一応コントラバス用の王道辺りは一通り試した後でそちらへ踏み込む事をオススメします。


そしてもうひとつ大事なこと
松ヤニは溶けます!

前述した通りコントラバスの松ヤニは他のものに比べて非常に柔らかいです。
その為熱に弱く夏場なんかは放置するとデロデロに溶けてしまいます。気をつけましょう。
それぞれの種類に合った管理方法がありますので、後述します。




オススメ三選

左からコルスタイン、ポップス、カールソン

プロのコントラバス弾きの方々が現場に持ってくる松ヤニの8割9割がこの三種のどれかじゃないでしょうか(個人的見解です。ちゃんと数えた訳ではございません)。
ソロなんかは皆さまそれぞれ工夫してらっしゃいますがね。

ちょいちょい新しいのが流行ったりしますが結局不承不承またこの辺に落ち着いちゃうんです。

それでは写真左から順に参りましょう。



1.コルスタイン(KOLSTEIN ULTRA)
金色の派手な箱の中に更に黒いゴムのケースに入っています。
使うときはゴムケースをベロっと剥いて、塗ったらまた戻してください。
このゴムケースが優秀なので溶けることに関してはあまり気にしなくても大丈夫です。あまりに溶けまくるとさすがに品質が変わってしまいますが。

そしてコルスタインの中にも種類があります。
写真のピンクの丸で囲んだ部分、見辛いですが "AW" と刻印があるのが見えるでしょうか?

これは "All Weather" の略です。
直訳すると全天候型と言う意味ですが、雨の中でも使えますよ!って意味ではなく、一年中通して使えますよと言う意味です。
暑さには比較的強い方です。

もうひとつよく使われているのが "S" と刻印がある "Soft" です。
こちらはそのまんま柔らかいの意味です。
柔らかい分ベタベタ度も強く強力に引っ掛かりますが、夏なんかに調子に乗って塗りすぎるととんでもないことになります。えいっと塗ると納豆のように糸をひきます。毛を団子にしたくなければ加減するようにしてください。

あとは “Hard” なるものがあるらしいという話を聞いた事があるのですが、僕は周りで日常的に使っている人に出くわしません。固いんだと思います。



2.ポップス(POPS)
使ってる人が1番多いのではないかと思われます(個人的見解)。
しかしながら溶けやすさもぶっちぎりのナンバーワン!
ちょっと暖かくなると夏を待ちきれずに溶け始めます。蓋を開ける度に現代アートのような見知らぬ形になっています。故に快適に使うためにはひと手間必要になります。

赤いケースから取り出すとこんな感じで白い紙に包まれています。
まずはこの紙を全部剥がしてください。
冬はそのままベリベリ剥がせますが、暖かい季節だとくっついてなかなか剥がれません。
その際は冷蔵庫でしばらく冷やすと剥がしやすくなります。

紙を剥がしておかないと、松ヤニが溶けた時に中に巻き込まれて固まってしまいます。そうなると塗るのが大変です。
剥がすとこうなる


その後はいくつかやり方があります。



その1
コンビニのでもスーパーのものでも良いので、ビニール袋を切って包み、そのまま赤いケースに入れる。
こんな感じ



その2
100均などで売っているお弁当のおかずを入れる耐熱のヤツに入れて、赤いケースにいれる。

こーゆーヤツ



その3
そのまま赤いケースに入れる。
この場合松ヤニが溶けるとケースの内側にくっつくので、出てこない場合は

ケースを外側からグニグニ揉む(ケースの形が動くので内側の壁から松ヤニが大体剥がれます)
ケースを逆さにしてゴンゴン叩く

そうすると松ヤニが出てきますが、逆さにして置いていた場合、ケースの内側だけじゃなく蓋部分にくっついてしまうことがありますのでご注意下さい。蓋を開けるのに苦労することになります。


ちょっと面倒かも知れませんが、最初にこのどれかをやっておかないと後でもっとメンドくさいことになります。夏は確実に溶けますので。


POPSは溶けて再び固まってもあまり品質が変わらないとは言われていますが、経年変化に弱いとも言われています。
僕は長くても半年くらいで買い換えていますが、気にならなければ何年使ってもいいんじゃないでしょうか。
プロの人達の中でもこだわる方々なんかは、いかにフレッシュなPOPSを入手するかに注力していたりしていなかったりします。
僕はそう言う友人に便乗して買って来てもらいます。



その4
そんなフレッシュな松ヤニにこだわる方々に、ここ最近流行ってきたスウェーデン発松脂収納専用ケース “Rosin saver” 
主にPops用に作られていらしく、ピッタリ入るサイズです。


赤いシリコン製のケースに紙を剥がした松ヤニを入れて使います。
その下には湿度調整剤が入っています。
この湿度調整剤のおかげで松ヤニの鮮度をキープします、と言うことらしい。

先に申し上げた通り最近周りで使っている人が増えてきておりますが、使っている方々曰く

夏は上の写真のように溶けて変形しても大丈夫。
冬は湿度調整剤の効力でカサカサになりすぎることもない。
と、かなり好評のようです。




3.カールソン(carlsson)
青もしくは黒、稀にデザイン違いの紫のケースに入っています。
その中に金属に包まれた松ヤニが入っていますので、使う分だけ金属部分を剥がして使って下さい。
カッターなんかでそっと切れ目を入れてあげると剥がしやすいです。強くやっちゃうと松ヤニまで切れてしまうので気をつけましょう。
カッターを使うのがメンドくさい、恐い場合は手でも普通に千切れます。

ポップスやコルスタインのソフトの様にデロデロに溶けるなんて事はあまりないのですが、気温が高めの時に塗りすぎると逆に弓がヌルヌル滑ってしまうので気をつけましょう。





以上オススメのよく見る3つを挙げてみました。
3つともキャラクターも音色もかなり違うので、色々試してみたい人はとりあえずこの3つを試してから他のものに手を出してみるといいと思います。