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コントラバスの呼び名の話




コントラバスってとにかく呼び方、名前がたくさんあります。
ざっとよく使われるものを述べてみましょう。



コントラバス


●Contrabass(英語)コントラバスorコントラベイス
●Kontrabass(ドイツ語)コントラバス
●Contrabbasso(イタリア語)コントラバッソ
●Contrabasse(フランス語)コントラバス
●Contrabajo(スペイン語)コントラバホ

主な各国のコントラバスの綴りと無理矢理のカタカナ表記です。


本来「コントラバス」とは音域を差す言葉です。
ソプラノ、アルト、テノール、バスって音域を表す言葉を聞いた事ありますよね?
その中のバスよりさらに低い音域がコントラバスです。
だもんでコントラバスクラリネットとか他の楽器の1番低い音域の楽器にもその名前がついていたりします。

もともと音域を表す言葉だったのに、なんとなく楽器の名前として使われてきたんですね。
この辺は簡単なコントラバスの歴史をそのうち別のお話でしようと思います。



ダブルベース


●Double bass(英語)ダブルベイス

語源は見た通りそのまま「バスより2倍低い(バスより更に1オクターブ低い)」です。コントラバスと同じ意味ですね。


余談
外国のコントラバス奏者の方々なんかと英語で会話している時は、単に”bass(ベイス、もしくはバス)”と呼ぶ事がほとんどな気がします。
そう言えば僕も英語の時はベイスって呼んでますね。
指揮者なんかはちゃんとコントラバスとかダブルベースって言うこともあるかも。英語圏の方はコントラベイスって言うこともあるかも。かも。
クラシック業界に限ります。他のジャンルの外国の方々とみっちりお話した事がないので、その辺どうなのかはちと分かりません。



ウッドベース


綴りはありません。
何故かと問われればこう答えましょう。

和製英語だからです。
日本人が勝手に英語っぽく作っちゃった言葉です。有名な話ですが。
だもんでもし外国の方々とお話しする機会があった時に「アイ プレイ ウッドベース!」って言っても通じません。

主にJAZZやPops方向の方々に使われている呼称です。略して「ウッベ」とか「ウッド」って言われている事が多い気がします(もはや「木」としか呼ばれてない笑)。

エレクトリックベースに対してのウッドベースと言う呼び名であろうと愚考する次第です。
まあエレクトリックベースも材料は大抵ウッドなんですけどね。




ここでちょっとだけ閑話。

先程「エレクトリックベースに対してのウッドベース」と書きましたが、これをレトロニム(retronym)と言います。


なんじゃそりゃ?笑


レトロニムとはある特定の物事、事象に対する名称があって、それが進化発展した結果、古くからあるものを区別して表すために出来た言葉のことを指します。


例えば
元々「電話」があって、その後「携帯電話」が生まれたので、元々の電話を表すために「固定電話」と言う言葉が出来ました。

元々「携帯電話」「ケータイ」があって、その後「スマートフォン」「スマホ」が生まれたので、元々のケータイを表すために「ガラケー」と言う言葉が出来ました。

これが「レトロニム」です。

進化して新しいものが生まれた結果、古いものを新しいものと区別するために違う名前をつけることですね。


元々「ベース」があって、「エレキベース」が出来たために、「エレキベース」と区別するために「ウッドベース」と呼ぶようになりました。


コントラバスの呼び名に関してはこのレトロニムが多いような気がしています。
進化したものが生まれた結果、新しい名前が出来たり出来なかったり…。
新しい名前が出来ても、略して呼んじゃった結果、結局他の名前と同じになっちゃったり。

あとは使われてる音楽ジャンルが多過ぎる。笑

その辺りが混乱の火に油をぶちまけみんなで扇いでわっしょいわっしょいの原因のひとつではないかと。

それだけまだ進化の途中にあると言う事でもあります。

それでは続きをどうぞ!


アップライトベース


●Upright bass (英語)アップライトベイス

これもエレクトリックベースに対して、アップライト(直立した)ベースって事でコントラバスのことを指すようです。(エレクトリックベースは横に寝てますからね!)
横に広いグランドピアノを縦に四角くした、よくお家にあるものをアップライトピアノと呼びますね。そんな感じです。


世の中にはこんなモノがありまして。
エレクトリック アップライト ベース(Electric upright bass、EUBと表記が略されることアリ)と呼ばれる楽器です。

写真を撮るために数年ぶりにケースから出しました。カビたりしてなくて良かった…。


アップライトベースをエレクトリックにしました!と言う楽器なのですが、これを略しちゃって単に「アップライトベース」もしくは「アップライト」と呼ぶことも。

なので「アップライト」って言われた時に「コントラバス?EUB?どっちのこと!?」と戸惑うことも。

ちなみに見たことある人も多いかもしれないこの↓
ヤマハのサイレントベースなんかもエレクトリックアップライトベースのお仲間に入ります。
Alter egoの楽器が欲しい…。



アコースティックベース


●Acoustic bass (英語)アコースティック ベイス

これもまたエレクトリックベースに対して、アコースティックベースと呼ばれ出したのであろうと思うのですが。

しかし!

これもまたややこしいのです。
世の中にはアコースティック ベース ギターと言うアコースティックギターのベース版の楽器がありまして(申し訳ないことにさすがにこれは所有しておりませんもので、写真が載せられません。姿を見たい方は是非検索してみて下さいませ)。

どちらも略して「アコベ」なんて呼んだりするんですね。これもまた「どっちやねん!」と言いたくなるシロモノでございます。

まあJAZZ界隈で「アコベ」と言えば大体コントラバスの事であろうとは思いますが。



弦バス


●String bass (英語)ストリング ベイス

吹奏楽の中でチューバなどの管楽器のbass群に対して呼ばれる名前です。英語をそのまんま訳して「弦バス」。
吹奏楽部の皆さんはよく使う呼び名だと思います。


し か し

クラシック業界、オーケストラ界隈のコントラバス奏者の方々はこの呼び名を嫌がる事が多いです。

僕も中高吹奏楽部時代は普通に使っていたんですが、音大に入ってかなり最初の段階で先輩方に口を酸っぱくして言われました。
「弦バスと呼ぶな。」と。

お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、僕のサイトでは「弦バス」なる呼称を一度たりとも使用しておりません。今ここで初めて出しました。

今回この「コントラバスの呼び名の話」を長々と書いたのは、実はコレが言いたかったからなのです。


賛否両論色々あるとは思いますが、せめて講師の先生やプロのコントラバス奏者の方とお話する機会には「弦バス」と呼ばない事をオススメします。
もしかしたら今あなたの前にいる人は「弦バス」と呼ばれる事を嫌がるかもしれません。

皆さん小さい頃に”人の嫌がる事はやっちゃダメだよ”って教わったと思います!
嫌がる人がいる事はなるべくやめましょう!




いかがでしたか?

恐ろしい事に今回出してない呼び方、名前もまだまだあるんですよ!
色々呼び名があるのはコントラバスが様々なジャンルの音楽で使われていて、かつ進化の途中にいるせいでもあります。


そんなどこにでもいるコントラバス。
気づけばあなたの隣にコントラバス。
色んなジャンルの音楽を聴いて楽しんで、更に演奏して楽しんでくれると嬉しく思います。

それではまた!